ヤーコン(キク科スマランサス属)
土壌医●藤巻久志
ヤーコンは南米アンデス原産の芋類で、アンデスポテトの別名があります。ベランダでも10号(30cm)以上の鉢や大型プランターで簡単に栽培できます。草姿が似ているのでキクイモと間違えやすいですが、ヤーコンはスマランサス属、キクイモはヒマワリ属です。
現在は、植物の分類はゲノム分析によるAPG分類体系が主流になり、ヤーコンはポリムニア属からスマランサス属になりました。昭和時代に出版された植物関係の本は、科名や属名が現在のものと違うことが多くあります。
品種や天候などによっても違いますが、ヤーコンは地下部に100~200g程度の塊根を10個程度付けます。ダリアやサツマイモに似た形で、生では食べられそうに見えませんが、皮をむき薄く切ってサラダにすると美味です。切り口は空気に触れると褐変してしまうので、酢水などにさらしてから使いましょう。英名がYacon strawberryというように甘みがあり、梨やレンコンのようなシャキシャキとした歯触りです。
この甘みはフラクトオリゴ糖で、腸内の善玉菌を増やします。コレステロール値の改善や糖尿病の予防効果などが期待できます。フラクトオリゴ糖と、多く含まれる繊維質は便秘解消にも役立ちます。
塊根はポリフェノールも豊富に含んでいます。ポリフェノールは皮にも多く含まれているので、皮をきんぴらにするのも良いでしょう。果肉のシャキシャキ感は加熱しても楽しめ、豚肉との相性は抜群です。
葉を乾燥させてお茶にすると血糖値を下げるといわれているため、血糖値が気になる人にもお薦めです。
まさにヤーコンは健康野菜です。それなのにスーパーの野菜売り場に並ばないのは、外観があまり良くないことと、食べ方が分からないからでしょう。この「野菜もの知り百科」がヤーコン普及の一助になれることを祈っています。