トレビス(キク科キクニガナ属)
土壌医●藤巻久志
今の若い人はイタリア料理を「イタ飯」とはいいません。30年以上も前のバブル時代に流行した言葉です。当時は手頃な価格でおいしいイタリア料理店が急増しました。格式張ったフランス料理よりもカジュアルなイタリア料理の方が好まれていました。
イタリア料理には、イタリアントマト(サンマルツァーノ)やバジルなどのイタリア野菜が使用されます。ズッキーニやルッコラなどは日本でも栽培されるようになりましたが、トレビスはまだ輸入の方が多いです。
トレビスはフランス語で、イタリアでは「ラディッキオ」、米国では「レッドレタス」、日本では「赤チコリー」とも呼ばれています。形は赤キャベツに似ていますが、キャベツはアブラナ科、トレビスはレタスと同じキク科です。
トレビスは、ワインレッド色の葉身に白い葉脈が入り、そのコントラストがきれいです。葉は薄く柔らかいです。日本では結球タイプが流通していますが、半結球タイプや不結球タイプもあります。
サラダに入れる赤色は、彩りが良くなるだけでなく食欲もそそります。昭和時代中期には赤キャベツやニンジンを刻んだサラダが多かったのですが、平成時代になるとトレビスをちぎったものが高級感を醸し出すようになりました。
トレビスの鮮やかな色はポリフェノールの一種のアントシアニンによるものです。抗酸化作用があり、がん抑制や視力向上に効果があるといわれています。加熱すると色が抜けるので、生食でシャキシャキとした食感とほろ苦さを楽しみます。
イタリアは地中海に面し、周辺を原産地とするトレビスやカリフラワーなどの野菜が多いですが、映画も『道』や『ライフ・イズ・ビューティフル』など名作がたくさんあります。『ローマの休日』や『ツーリスト』などの舞台にもなっています。食事や市場のシーンにトレビスが登場するかもしれません。