タアサイ(アブラナ科アブラナ属)
土壌医●藤巻久志
「中国野菜」は、中国から輸入されたニンニクやニンジンなどの生鮮野菜も意味しますが、一般には1972年の日中国交正常化に伴い種子が導入されて栽培されるようになった野菜をいいます。チンゲンサイやエンサイなどです。ハクサイも中国原産で、英名もチャイニーズキャベツですが、日本に伝わったのが日清・日露戦争の頃だったので「中国野菜」と言うことはめったにありません。
タアサイは第2次世界大戦中に伝来し、寒さに強いため「如月菜(きさらぎな)」と名付けられました。雪の中でもゆっくりと生育するので「ちぢみ雪菜」とも称しましたが、普及したのは東北の一部だけでした。「中国野菜」として再登場したときは、円盤のような形状とおいしさから全国的な人気になりました。
葉は厚みのある極濃緑色で、一見堅そうに見えますが柔らかで、繊維質が少なく歯切れが良いです。丸葉で葉数が多く、長い葉柄があり、放射状につぶれたように生育します。漢字ではつぶされた菜っ葉という意味の「塌菜(タアサイ)」と書きます。
通年栽培ができ、特に寒さに遭った物は甘味が増しておいしいです。冬場は開帳型ですが、夏場は半立ち型で葉の枚数も少なくなります。
癖がなく、炒め物、煮物、あえ物など、さまざまな料理に使えます。火の通りが早いので、シャキッと仕上げるには高温で、短時間で調理します。ベータカロテンやビタミンCを多く含み、それらはがん予防効果が期待されています。
タアサイはアブラナ属の野菜ですから、春になるととう立ちして花を咲かせます。花が咲かなければ種子は取れません。タアサイのとうは菜の花としておいしく食べられます。次から次へととうが出て、収穫量は菜っ葉としてのタアサイよりも多いくらいです。とうは花や種を作るエネルギーを含んでいるので、食べると元気になります。