トウガン(ウリ科トウガン属)
土壌医●藤巻久志
西瓜(スイカ)、南瓜(カボチャ)、胡瓜(キュウリ)、越瓜(シロウリ)、糸瓜(ヘチマ)など、ウリ科の野菜には漢字の読みが面白い物が多くあります。トウガンは冬瓜と書きますが、冬に取れるからではなく、夏に収穫して冬まで貯蔵できるのでこの名前が付きました。
生育適温25~30度の高温性で栽培期間も長いので、夏が短い寒地(年平均気温が9度未満の地域)での栽培は難しいです。栽培が盛んな亜熱帯(同18度以上)の沖縄では「シブイ」ともいい、「シブイ」の4と「トウガン」の10で4月10日を「とうがんの日」にしています。
トウガンの原産地は東南アジアの熱帯で、中国には3世紀ごろに伝わり、種子も消炎や利尿などの薬として利用されていました。日本には5世紀ごろに伝わり、奈良時代には食されていたという木簡があります。
品種には大玉系(10kg程度)、中玉系(5kg程度)、小玉系(1~2kg)があります。果形は長楕円(だえん)形と丸形があり、「長トウガン」は70cm以上の果長になります。大玉系のカット売りもされていますが、近年は小家族でも一度に使い切れる小玉系が人気です。
未熟の多くのトウガンの果皮には、触ると痛いくらいの産毛が生えていて、熟すにつれて産毛は落ちていきます。完熟するとブルーム(果粉)という白いろう状粉を吹きます。ブルームはキュウリやブドウなどにも発生し、人体には無害です。キュウリと同じように、艶々のブルームレストウガンもあります。
果実の95%は水分で、カリウムやビタミンCを多く含みます。カロリーも低く、ダイエットにも向く野菜です。皮とワタを除いた部分を利用します。果肉は柔らかく、淡泊な味なので、昆布やかつお節などのだしがよく染みます。体温を下げる働きもあり、豚肉との料理を食べると夏バテ防止になります。