レタス(キク科アキノノゲシ属)
土壌医●藤巻久志
レタスの和名は萵苣(ちしゃ)で、乳草(ちちくさ)と呼ばれていたのが変化したものです。学名はLactuca sativa L.です。属名のLactucaは乳を意味し、茎を切ると乳白色の液が出ることにちなんでいます。種小名のsativaは栽培という意味で、L.は命名者のリンネの略記です。乳白色の液は同じキク科のタンポポやノゲシの茎を切っても出てきます。レタスの切り口が赤褐色に変色するのは、この液に含まれているポリフェノールが酸化したもので、病気や腐っているわけではありません。なめてみるととても苦く、これが害虫から守ってくれているといわれています。
レタスの原産地は地中海沿岸で、エジプトでは紀元前4500年ころから栽培されていました。古代ギリシャや古代ローマでは、健康と安眠をもたらす野菜として食べられてきました。乳白色の液はサポニン様物質といい、肝臓や腎臓の機能を高める働きがあり、食欲増進や精神安定の作用もあります。
レタスには玉レタス、コスレタス(立ちチシャ)、リーフレタス(サニーレタス)、ステムレタス(茎チシャ)などがあります。最も多く流通しているのは玉レタスで、主産地は長野、茨城、群馬などです。
現在の野菜の半分以上は家庭用ではなく、外食や中食などの業務用に使われています。業務用というと昭和時代は漬物用で、ダイコンやハクサイなどの契約栽培が行われるようになりました。当時の農業現場には契約順守という概念が少なく、取引価格を決めても、青果が高ければ農家は市場に出荷し、安ければ業者は引き取り価格を下げるということがたびたびありました。
ファミレスのサラダやコンビニのサンドイッチのレタスは、欠品が許されず、天候のせいにすることはできません。レタスにも工業製品並みの安定品質、安定数量、安定価格が求められています。